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リステリオリシンO
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'''リステリオリシン'''(Listeriolysin O、LLO)とは、[[リステリア症]]の病原菌[[リステリア・モノサイトゲネス]](''Listeria monocytogenes'')の産生する[[溶血素]]である。この毒素は''L. monocytogenes''の病原性に決定的に重要であるため、この細菌の[[病原性因子]]の一つと見られている<ref></ref>。
== 性質 ==
リステリオリシンO(LLO)は非酵素的、細胞溶解性、[[チオール]]活性性、[[コレステロール]]依存性の[[膜孔形成毒素]][[タンパク質]]である。他のチオール活性化毒素と同様、[[還元剤]]によって活性化され、[[酸化剤]]によって阻害される<ref name="Geoffroy"></ref> 。しかし、LLOは、その細胞溶解活性がpH5.5で最大になる点で他のチオール活性化毒素とは異なる。
pH5.5で活性を最大化させる性質は、''L. monocytogenes''が[[食作用|貪食]]されたときに酸性の[[ファゴソーム]](平均pHは5.9以下)内でLLOを選択的に活性化させる<ref></ref>。LLOがファゴソームを溶解した後、細菌は[[細胞質]]へ脱出して細胞内で増殖することができるようになる。ファゴソームより塩基性の細胞質に入ると、LLOの活性は低下する。
LLOは、ファゴソームからの脱出を、感染先の細胞の[[原形質膜]]を損傷することなく可能にする。''L. monocytogenes''は細胞内に留まり、[[補体系]]や[[抗体]]などの細胞外[[免疫系]]因子からの攻撃を受けずに生育する。
LLOはまた、''L. monocytogenes''が宿主細胞へ侵入する前に、[[ヒストン]]H3の[[脱リン酸化]]およびヒストンH4の[[脱アセチル化]]を感染の初期段階に引き起こす<ref name="Hamon 2007"></ref> 。このヒストン改変には膜孔形成活性は関わらない。ヒストンの改変は、[[炎症]]応答に関与するタンパク質をコードする遺伝子を[[下方制御]]する。したがって、LLOは、''L. monocytogenes''に対する宿主の免疫応答の妨害に重要であると考えられている。
LLOには[[PEST配列|PEST様配列]]が存在し、この配列を欠損した突然変異体が宿主細胞を溶解するため、病原性に必須であると考えられている<ref></ref> 。PEST配列はタンパク質分解誘導シグナル分子であるが、このPEST様配列はLLOの分解を増加させるよりむしろ、細胞質でのLLO産生を調節している可能性が示唆されている<ref></ref>。
== 発現制御 ==
リステリオリシンOは''hly''遺伝子にコードされており、この遺伝子は、LIPI-1と呼ばれている[[病原性アイランド]]の一部である<ref>Virulence Factors of Pathogenic Bacteria. [https://ift.tt/2nb4h5U "Pathogenicity islands in Listeria: LIPI-1."] State Key Laboratory for Molecular Virology and Genetic Engineering, Beijing, China. Last accessed June 18, 2007.</ref> 。''prfA''の[[翻訳 (生物学)|翻訳]]は37℃で最大化し、30℃でほぼ沈黙するというように、''prfA''はPrfA温度調節因子UTRエレメントによって温度で制御されている<ref></ref> 。37℃は平常時の体温の範囲内であるため、PrfAタンパク質、ならびにPrfAによって発現制御されるリステリオリシンO等の[[病原性因子]]は、''L. monocytogenes''が宿主に侵入したときに限定して産生される。
== 参考文献 ==
== 外部リンク ==
* Todar's Online Textbook of Bacteriology - [https://ift.tt/20zh3YT "''Listeria monocytogenes'' and Listeriosis"]
[[Category:細菌毒素]]
== 性質 ==
リステリオリシンO(LLO)は非酵素的、細胞溶解性、[[チオール]]活性性、[[コレステロール]]依存性の[[膜孔形成毒素]][[タンパク質]]である。他のチオール活性化毒素と同様、[[還元剤]]によって活性化され、[[酸化剤]]によって阻害される<ref name="Geoffroy"></ref> 。しかし、LLOは、その細胞溶解活性がpH5.5で最大になる点で他のチオール活性化毒素とは異なる。
pH5.5で活性を最大化させる性質は、''L. monocytogenes''が[[食作用|貪食]]されたときに酸性の[[ファゴソーム]](平均pHは5.9以下)内でLLOを選択的に活性化させる<ref></ref>。LLOがファゴソームを溶解した後、細菌は[[細胞質]]へ脱出して細胞内で増殖することができるようになる。ファゴソームより塩基性の細胞質に入ると、LLOの活性は低下する。
LLOは、ファゴソームからの脱出を、感染先の細胞の[[原形質膜]]を損傷することなく可能にする。''L. monocytogenes''は細胞内に留まり、[[補体系]]や[[抗体]]などの細胞外[[免疫系]]因子からの攻撃を受けずに生育する。
LLOはまた、''L. monocytogenes''が宿主細胞へ侵入する前に、[[ヒストン]]H3の[[脱リン酸化]]およびヒストンH4の[[脱アセチル化]]を感染の初期段階に引き起こす<ref name="Hamon 2007"></ref> 。このヒストン改変には膜孔形成活性は関わらない。ヒストンの改変は、[[炎症]]応答に関与するタンパク質をコードする遺伝子を[[下方制御]]する。したがって、LLOは、''L. monocytogenes''に対する宿主の免疫応答の妨害に重要であると考えられている。
LLOには[[PEST配列|PEST様配列]]が存在し、この配列を欠損した突然変異体が宿主細胞を溶解するため、病原性に必須であると考えられている<ref></ref> 。PEST配列はタンパク質分解誘導シグナル分子であるが、このPEST様配列はLLOの分解を増加させるよりむしろ、細胞質でのLLO産生を調節している可能性が示唆されている<ref></ref>。
== 発現制御 ==
リステリオリシンOは''hly''遺伝子にコードされており、この遺伝子は、LIPI-1と呼ばれている[[病原性アイランド]]の一部である<ref>Virulence Factors of Pathogenic Bacteria. [https://ift.tt/2nb4h5U "Pathogenicity islands in Listeria: LIPI-1."] State Key Laboratory for Molecular Virology and Genetic Engineering, Beijing, China. Last accessed June 18, 2007.</ref> 。''prfA''の[[翻訳 (生物学)|翻訳]]は37℃で最大化し、30℃でほぼ沈黙するというように、''prfA''はPrfA温度調節因子UTRエレメントによって温度で制御されている<ref></ref> 。37℃は平常時の体温の範囲内であるため、PrfAタンパク質、ならびにPrfAによって発現制御されるリステリオリシンO等の[[病原性因子]]は、''L. monocytogenes''が宿主に侵入したときに限定して産生される。
== 参考文献 ==
== 外部リンク ==
* Todar's Online Textbook of Bacteriology - [https://ift.tt/20zh3YT "''Listeria monocytogenes'' and Listeriosis"]
[[Category:細菌毒素]]
https://ift.tt/2nb4i9Y