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【外部リンク】
A-DNA
Smilesworth: :en:A-DNA (07:43, 8 August 2019 UTC) を翻訳
[[File:Adna3.ogv|right|200px|thumb|alt="The A-DNA structure"|A-DNAの構造]]
'''A-DNA'''または'''A型DNA'''は、[[デオキシリボ核酸|DNA]]がとることのできる[[二重らせん]]構造の1つである。A-DNAは、[[二重らせん|B-DNA]]、ともに生物学的活性のある3つの二重らせん構造のうちの1つであると考えられている。一般的なB-DNAに似た右巻き二重らせんであるが、B-DNAよりも短くコンパクトならせん構造であり、[[塩基対]]はらせん軸に対して直交していない。A型・B型のDNA構造は[[ロザリンド・フランクリン]]によって発見され、命名された。彼女は脱水条件下でA型のDNA構造となることを示した。こうした条件はDNAの[[結晶]]の形成の際によく利用され、多くのDNAの[[結晶構造]]がA型構造である<ref name=":0">Liquid error: wrong number of arguments (given 1, expected 2)</ref>。同様のらせん構造は、[[リボ核酸|RNA]]の二重らせんやDNA-RNAハイブリッドの二重らせんでもみられる。
==構造==
A-DNAは、主溝(major groove)と副溝(minor groove)を持つ右巻き二重らせんであるという点でB-DNAとよく似ている。しかしながら、下の比較表で示されているようにA-DNAはB-DNAと比較して、らせん1回転当たりの塩基対の数はわずかに多く(したがってねじれ角は小さくなる)、塩基対間の距離(rise per base pair)は小さい(したがって同じ長さの鎖から形成される二重らせんの長さは20–25%短くなる)。A-DNAの主溝は深くて狭く、一方で副溝は幅広く浅い。A-DNAはB-DNAよりも直径が大きく、らせん軸に沿ってより圧縮されたような見た目をしている<ref name=":1">Liquid error: wrong number of arguments (given 1, expected 2)</ref>。
==一般的なDNAの形状の比較==
[[Image:Dnaconformations.png|right|thumb|A-DNA、B-DNA、Z-DNAを側面と真上から見た図。]]
[[Image:B&Z&A DNA formula.jpg|thumb|right|250px|黄色の点はA-DNA、B-DNA、Z-DNAのらせん軸と塩基対との位置関係を示している。図の糖部分はZ-DNAのものであり、A-DNAとは立体配座が異なる。]]
{| class="wikitable"
|-
!
!'''A型'''
!'''B型'''
!'''Z型'''
|-
|らせんの巻き方 || align="center" | 右巻き || align="center" | 右巻き || align="center" | 左巻き
|-
|反復単位 || align="right" | 1 [[塩基対|bp]]|| align="right" | 1 bp||align="right"| 2 bp
|-
|1塩基対ごとの回転 || align="right" | 32.7° ||align="right"| 34.3° ||align="right"| 60°/2
|-
|らせん1回転当たりの平均塩基対数 || align="right" | 11 ||align="right"| 10 ||align="right"| 12
|-
|らせん軸に対する塩基対の傾き || align="right" | +19° ||align="right"| −1.2° ||align="right"| −9°
|-
|らせん軸に沿った塩基対間距離(rise/bp along axis) || align="right" | 2.6 [[オングストローム|Å]] (0.26 nm)|| align="right" | 3.4 Å (0.34 nm)||align="right"| 3.7 Å (0.37 nm)
|-
|らせん1回転当たりの距離(rise/turn of helix) || align="right" | 28.6 Å (2.86 nm)||align="right"| 35.7 Å (3.57 nm)||align="right"| 45.6 Å (4.56 nm)
|-
|塩基対の平均プロペラねじれ角(propeller twist) || align="right" | +18° ||align="right"| +16° ||align="right"| 0°
|-
|[[グリコシド結合]]の結合角 || align="center" | anti ||align="center"| anti ||align="center"| ピリミジン: anti<br>プリン: syn
|-
|[[ヌクレオチド]]のリン酸間距離 || align="center" | 5.9 Å || align="center"| 7.0 Å || align="center" | C: 5.7 Å, <br>G: 6.1 Å
|-
|糖の立体配座(sugar pucker) || align="center" | C3'-endo ||align="center"| C2'-endo ||align="center"| C: C2'-endo,<br>G: C3'-endo
|-
|直径 || align="right" | 23 Å (2.3 nm)||align="right"| 20 Å (2.0 nm)||align="right"| 18 Å (1.8 nm)
|}
==生物学的機能==
DNAの脱水は二重らせんをA型へ駆動し、この変化は極度の乾燥条件下で[[細菌]]のDNAを保護しているようである<ref name=":2"></ref>。また、桿状[[ウイルス]]の構造から示されているように、[[タンパク質]]の結合によってもDNAから溶媒が除去されてA型へ変換される<ref name=":3"></ref>。
[[バクテリオファージ]]で2本鎖DNAを詰め込みを担うモーターはA-DNAがB-DNAよりも短いことを利用しており、DNAの立体配座の変化自体がモーターの大きな動力源となっていることが示唆されている<ref name=":4"></ref>。A-DNAがウイルスの生体モーターによる詰め込みの中間体であることの実験的証拠は2つの色素を用いた[[蛍光共鳴エネルギー移動|FRET]]測定から得られており、B-DNAは24%短くなったA型中間体構造をとることが示されている<ref name=":5"></ref><ref name=":6"></ref>。このモデルでは、DNAを脱水したり再水和したりするタンパク質の立体配座の変化を駆動するために[[アデノシン三リン酸|ATP]]の加水分解が利用され、DNAの伸縮サイクルがタンパク質によるDNA結合解離サイクルと共役することによってDNAが[[キャプシド]]内へ向かう運動が生み出されている。
==出典==
==関連項目==
*[[核酸の三次構造]]
*[[デオキシリボ核酸|DNA]]
*[[二重らせん|B-DNA]]
*
*
==外部リンク==
* [https://ift.tt/2F5jQ7P Cornell Comparison of DNA structures]
* [https://ift.tt/2Q3LDw0 Nucleic Acid Nomenclature]
[[Category:デオキシリボ核酸]]
'''A-DNA'''または'''A型DNA'''は、[[デオキシリボ核酸|DNA]]がとることのできる[[二重らせん]]構造の1つである。A-DNAは、[[二重らせん|B-DNA]]、ともに生物学的活性のある3つの二重らせん構造のうちの1つであると考えられている。一般的なB-DNAに似た右巻き二重らせんであるが、B-DNAよりも短くコンパクトならせん構造であり、[[塩基対]]はらせん軸に対して直交していない。A型・B型のDNA構造は[[ロザリンド・フランクリン]]によって発見され、命名された。彼女は脱水条件下でA型のDNA構造となることを示した。こうした条件はDNAの[[結晶]]の形成の際によく利用され、多くのDNAの[[結晶構造]]がA型構造である<ref name=":0">Liquid error: wrong number of arguments (given 1, expected 2)</ref>。同様のらせん構造は、[[リボ核酸|RNA]]の二重らせんやDNA-RNAハイブリッドの二重らせんでもみられる。
==構造==
A-DNAは、主溝(major groove)と副溝(minor groove)を持つ右巻き二重らせんであるという点でB-DNAとよく似ている。しかしながら、下の比較表で示されているようにA-DNAはB-DNAと比較して、らせん1回転当たりの塩基対の数はわずかに多く(したがってねじれ角は小さくなる)、塩基対間の距離(rise per base pair)は小さい(したがって同じ長さの鎖から形成される二重らせんの長さは20–25%短くなる)。A-DNAの主溝は深くて狭く、一方で副溝は幅広く浅い。A-DNAはB-DNAよりも直径が大きく、らせん軸に沿ってより圧縮されたような見た目をしている<ref name=":1">Liquid error: wrong number of arguments (given 1, expected 2)</ref>。
==一般的なDNAの形状の比較==
[[Image:Dnaconformations.png|right|thumb|A-DNA、B-DNA、Z-DNAを側面と真上から見た図。]]
[[Image:B&Z&A DNA formula.jpg|thumb|right|250px|黄色の点はA-DNA、B-DNA、Z-DNAのらせん軸と塩基対との位置関係を示している。図の糖部分はZ-DNAのものであり、A-DNAとは立体配座が異なる。]]
{| class="wikitable"
|-
!
!'''A型'''
!'''B型'''
!'''Z型'''
|-
|らせんの巻き方 || align="center" | 右巻き || align="center" | 右巻き || align="center" | 左巻き
|-
|反復単位 || align="right" | 1 [[塩基対|bp]]|| align="right" | 1 bp||align="right"| 2 bp
|-
|1塩基対ごとの回転 || align="right" | 32.7° ||align="right"| 34.3° ||align="right"| 60°/2
|-
|らせん1回転当たりの平均塩基対数 || align="right" | 11 ||align="right"| 10 ||align="right"| 12
|-
|らせん軸に対する塩基対の傾き || align="right" | +19° ||align="right"| −1.2° ||align="right"| −9°
|-
|らせん軸に沿った塩基対間距離(rise/bp along axis) || align="right" | 2.6 [[オングストローム|Å]] (0.26 nm)|| align="right" | 3.4 Å (0.34 nm)||align="right"| 3.7 Å (0.37 nm)
|-
|らせん1回転当たりの距離(rise/turn of helix) || align="right" | 28.6 Å (2.86 nm)||align="right"| 35.7 Å (3.57 nm)||align="right"| 45.6 Å (4.56 nm)
|-
|塩基対の平均プロペラねじれ角(propeller twist) || align="right" | +18° ||align="right"| +16° ||align="right"| 0°
|-
|[[グリコシド結合]]の結合角 || align="center" | anti ||align="center"| anti ||align="center"| ピリミジン: anti<br>プリン: syn
|-
|[[ヌクレオチド]]のリン酸間距離 || align="center" | 5.9 Å || align="center"| 7.0 Å || align="center" | C: 5.7 Å, <br>G: 6.1 Å
|-
|糖の立体配座(sugar pucker) || align="center" | C3'-endo ||align="center"| C2'-endo ||align="center"| C: C2'-endo,<br>G: C3'-endo
|-
|直径 || align="right" | 23 Å (2.3 nm)||align="right"| 20 Å (2.0 nm)||align="right"| 18 Å (1.8 nm)
|}
==生物学的機能==
DNAの脱水は二重らせんをA型へ駆動し、この変化は極度の乾燥条件下で[[細菌]]のDNAを保護しているようである<ref name=":2"></ref>。また、桿状[[ウイルス]]の構造から示されているように、[[タンパク質]]の結合によってもDNAから溶媒が除去されてA型へ変換される<ref name=":3"></ref>。
[[バクテリオファージ]]で2本鎖DNAを詰め込みを担うモーターはA-DNAがB-DNAよりも短いことを利用しており、DNAの立体配座の変化自体がモーターの大きな動力源となっていることが示唆されている<ref name=":4"></ref>。A-DNAがウイルスの生体モーターによる詰め込みの中間体であることの実験的証拠は2つの色素を用いた[[蛍光共鳴エネルギー移動|FRET]]測定から得られており、B-DNAは24%短くなったA型中間体構造をとることが示されている<ref name=":5"></ref><ref name=":6"></ref>。このモデルでは、DNAを脱水したり再水和したりするタンパク質の立体配座の変化を駆動するために[[アデノシン三リン酸|ATP]]の加水分解が利用され、DNAの伸縮サイクルがタンパク質によるDNA結合解離サイクルと共役することによってDNAが[[キャプシド]]内へ向かう運動が生み出されている。
==出典==
==関連項目==
*[[核酸の三次構造]]
*[[デオキシリボ核酸|DNA]]
*[[二重らせん|B-DNA]]
*
*
==外部リンク==
* [https://ift.tt/2F5jQ7P Cornell Comparison of DNA structures]
* [https://ift.tt/2Q3LDw0 Nucleic Acid Nomenclature]
[[Category:デオキシリボ核酸]]
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